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『高速違反』
リノリウムの床。綺麗で磨きの通った廊下を啓太が走っていた。
「コラー、廊下は走ってはいけません」
ワシ鼻で、洋風混じりな顔立ちの教頭が啓太を怒鳴る。爪先の獲物にでもなったように啓太の体が硬直する。
「はい、すいません」
啓太がひたすら教頭に謝った。校長がアレなので実質ナンバー1が教頭だった。ついでにいうと校則に厳しいのだ。
「はい、違反キップ今回は2点だ」
「えっ、違反キップとかあるんですか?」
手書きで②点と書かれたメモ用紙を渡される。字が汚い。
「20点溜まると講習あるから気をつけて」
「講習……ですか」
啓太の中で嫌な感覚が流れた。どうせ、ロクでもない話しを聞かされ、教育ビデオでマインドコントロールでもされるのだろう。
「私が直々に違反者に公共のマナーと社会のルールを手取り足取り教えてやる。見事終了したら、この教頭認可講習卒業証明しょ!?」
教頭の声が止まった。大気が震えるように、エンジン音が鳴り渡っていた。
「高速上等」の声とともに、校長先生がポケバイで教頭の股をくぐる。さりげなくした股間の小アッパーが美しかった。
「おおおふっ。待ち……校長。今回の違反と公務執行妨害で、講習確定だ」
四つん這いになってまで追う教頭の執念は凄まじかった。
「なんなんだろ、この学校……」
教頭の尻を見ながら、啓太は呟いた。
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