Part1&人物紹介

8/11
前へ
/100ページ
次へ
『校庭に犬』 「あー校庭に犬が入ってきたぞ」  その声が上がったのが窓側の席からだった。嬉々とした視線が窓に向かう。  しかし舞子が黒板を叩いて、生徒たちの注目を浴びる。まがりなりにも教師としての意地だった。 「今は授業中よ。静かにしなさい。たかが犬くらいどこにでもいるでしょ」 「でも、舞子先生」  舞子の厳しい目線が、窓側の席の生徒を射ぬいた。たかが犬ごときに日程の消化を邪魔されるわけにはいかない。  外からキャーキャーと悲鳴がでる。 「まったく高校生にもなって犬くらいで」  舞子は頭を抱えたくなる。どのクラスも授業中だというのに。 「おわーこの犬でかいぞ」 「田代逃げろー」 「触手がでてるー」 「あっ校長先生が出てきた」  悪ふざけの過ぎる声がでていた。 「はいはい、もう窓を……」  舞子が窓を閉めようとした時だった。触手のでている巨大な犬を校長先生が締め上げているのが見えた。
/100ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加