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『校庭に犬』
「あー校庭に犬が入ってきたぞ」
その声が上がったのが窓側の席からだった。嬉々とした視線が窓に向かう。
しかし舞子が黒板を叩いて、生徒たちの注目を浴びる。まがりなりにも教師としての意地だった。
「今は授業中よ。静かにしなさい。たかが犬くらいどこにでもいるでしょ」
「でも、舞子先生」
舞子の厳しい目線が、窓側の席の生徒を射ぬいた。たかが犬ごときに日程の消化を邪魔されるわけにはいかない。
外からキャーキャーと悲鳴がでる。
「まったく高校生にもなって犬くらいで」
舞子は頭を抱えたくなる。どのクラスも授業中だというのに。
「おわーこの犬でかいぞ」
「田代逃げろー」
「触手がでてるー」
「あっ校長先生が出てきた」
悪ふざけの過ぎる声がでていた。
「はいはい、もう窓を……」
舞子が窓を閉めようとした時だった。触手のでている巨大な犬を校長先生が締め上げているのが見えた。
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