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人影の正体は紫苑だった。見えにくい所の石段に座り込み、袖を捲る。
片方の手には刃が出たカッターが持たれていて――――。
「お前!!何してるんだっ!!」
叫んだ葉月は走るスピードを上げ、彼女の傍へと駆け寄った。
呼ばれた方は驚きの余りカッターを落とし、拾おうと手を伸ばす。
寸前の所で、葉月はカッターを奪い放り投げた。
「あっ・・・・・・」
投げられた方をしばらく見つめ、その場に座り込むと紫苑は今にも泣きそうな表情で葉月を見上げた。
「何するんですか。あれは両親から買って貰った大事な物――――」
少女の言葉を遮るように葉月は声を荒げた。
「だったら尚更じゃないか!!そんな大事な物であんな事するんじゃない!!」
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