時は動きだした

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「姫。どうされますか?」 「このルナ・シルビアの名において好き勝手はさせないわ。でも今は少し様子を見ましょう。情報を集めておいて。」 姫。 それはシルバームーンの中で呼ばれる私の名称。そしてルナ・シルビアもアンダーグラウンドにおいての私の名。 そして宮野は私が表の世界で動いているときの名。どれも私の本当の名前ではない。 本当の名前で私を呼ぶ者は今はもういない。 昼間は表の生活、夜になれば裏の生活をし続けている彼女が本当のことを言えば心配でならない。身体の心配もあるが、彼女はまだ若い。 自分たちよりも若い彼女が組織を背負って生きている。彼女よりも遥かに歳が上の者を相手にしなくてはならない。ときに嫌みを言われることも少なくはない。 それでも彼女は前を向いて立っている。だからこそそんな彼女の心が折れないように泣かないように支えたいと我々は思っている。 「了解しました。あの方々にも伝えておきますか?」 「そうだね。協力してもらえることがあれば助かるかな。」 「じゃあ、すぐに連絡を。」 そう言うと静はすぐにパソコンを開きどこぞにメールを送った。その間、私は車の窓から外を眺めていた。 昼間の青い空から闇色へと変わる。青から赤その間に紫。闇へ変わるその瞬間がとても綺麗だと感じる。 「夕焼けはお好きですか?」 「うん。でも闇は嫌い。何も見えなくなるから。」 暗いだけの闇は嫌い。 どこに行けばいいのかわからなくなるから。 「でもね、闇ね中に光る星や月は好きよ。道を優しく照らしてくれるから。」 その言葉は我々が言いたいんですよ。 闇のアンダーグラウンドにいる我々を優しく照らしてくれる月は彼女なのだ。 シルバームーンの中にはどこにもいられなくなった奴らもいる。そんな彼らを受け入れ、道を照らしてくれたのが彼女だ。 「みんなが私の光だよ。」
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