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ルナは、ナフードがプレゼントする相手を想像する。
色黒、精悍な顔付き。多少の色目には見向きしなそうな印象がある。ルナは、名前しか聞いたことは無いが、戦禍での功績は輝かしい。
ナフードは、今ではほとんど失われているはずの精霊と話す神術を使いこなし、何でできているのか解らない黒い大剣で戦うという。本人は「砂の竜」と呼ばれた一族出身というが、ルナの辞書にも文献にも記載されていない。そんなミステリアスな雰囲気が、黒砂の異名を際立たせる。
そんな男が、女ではなく他の誰にプレゼントを送るというのだろう。師弟や部下、もしや家族が居るのかと、話に聴き入った。
「だから、シェリイ。人選を誤ったと言っている」
「はいはい。他ならぬナフの話だから真面目に答えるよ。勿論、誰かに言わないよ。だから先に部下の兵士を帰したことも」
ヴァプラが、酒を杯に継ぎ足して続ける
「それに。ナフから頂いたプレゼントに驚く相手の顔もみたいしな」
ルナは、扉を開いて向こうの様子を眺めた。ヴァプラの表情は、悪戯っ子を連想させる。ただ、何処までが本気かわからない喋り方であった。少し隙間を開いて、風の流れが変わったことに気付かれたか、言葉が数秒止まる。ルナは、惚けた振りをして、扉を開いて頭を下げた。
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