一章 鬼死還

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「本日、舞を披露することになって下りました、ルナと申します。それを兼ねて、お料理と酒の追加を伺に参りました」 「舞――ああ、そういえば、そんな話があったか。会合はもう開きにしている。舞は次の機会にしてもらいたい」  ナフードが、空の酒瓶を並べた。 「畏まりました。では、お酒の追加を致します。他に御用件があれば、なんなりとお申しつけください」  ルナは、酒瓶を取りに座敷に上がる。 「なあ、踊り子さん」  ヴァプラが、声を掛けて来る。 「はい」  酒瓶を抱えたルナは、小さく返事をしてヴァプラに振り返った。 「もし、誰かに贈り物をするとしたら、お姉さんなら何を贈る?」 「何故、そのようなことを私に?」  「質問してるのは俺。で、何が良いと思う?」  ルナの問い返しをヴァプラが遮断し、答えを促す。 「そうですね。プレゼントを贈るのは女性ですか、男性ですか?」 「できれば、どちらでも喜ぶものが良い」  ヴァプラが、答える。その反対側で、ナフードが知らぬ顔で、野菜を口にしていた。 「難しいですね。普通は、心の篭ったものであれば、大抵の人は喜ぶと思います」  ルナは、言葉を選びつつ、贈り主の存在を模索した。
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