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 三日月亭には、様々な人間がやってくる。中には、ルナが情報屋として働くことを知っていて、この店を訪れる者も居る。三日月亭は、密かな情報屋としても巷で有名になりつつあった。  ヴァプラとナフードの密会が終わってから数日後のこと。ルナは、夜皇国ネフティスが、傭兵ヘカトンケイルを雇い入れたという情報を得た。  ヘカトンケイルといえば、大陸でも名を馳せた一騎当千の傭兵でもある。年齢不詳の鬼死環で、虎の獣人だ。外見は、二メートル半はいくかというほどの超巨漢。黒く少し長めのターバンをして、余りを背中に流している。中は白銀の鎧を継ぎ接ぎにきており、虎の毛が節目節目からちょろりと飛び出している。シュトローベル製の成功な義手を幾つも自分につけているという。  百腕の巨人の偽名を語る傭兵で本名を知るものはいない。強者とより長い間戦いたいがために鬼死環になったという噂は有名だった。たくさん義手をつけており、その数は合計二十六本になる。昔の勝負で自分の腕が切り落とされた時、ヘカトンケイルの逸話を聞いたらしい。  なにより一対一の真剣勝負を好み、強者であれば女子供見境なく勝負を挑む。傭兵をしている理由までは知らないが、ヘカトンケイルを知るものは、そう語った。
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