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「鬼死還の説明をなさってくれるのでは無いのですね」  ルナは、無言の背中に問い掛ける。 「小生は、そんなことはしない。闘いがしたいだけだ」  数歩先行くヘカトンケイルが、答える。 「闘い――これから、何処に行くかくらい教えて頂けませんか」  ルナは、人通りが無くなる通路に、声を響かせた。 「鬼死還について良く理解している女のところだ。案ずるな」  ヘカトンケイルが、豪快に笑う。  やがて、ヘカトンケイルが、止まったのは一軒の小さな家だった。玄関の扉は、半開きの状態だ。人が住んでいるようにも見えない。家も心なしか傾いているような錯覚に陥る。 「アナンド。客を連れてきた。出てこい!」  ヘカトンケイルが、呼び掛ける。 「はいはい。先客が居るからちょっと待っててね」  中から、女の声だけ聞こえてきた。そのあと、ヴェルグの青年が出てきた。藍色の長髪に両目が赤いに冷たい微笑が印象的だ。しかも、イストリアの礼装服を着用していることをルナは見逃さない。思わず声を掛けようとしたが、青年は何も言わずに馬車に乗り去って行った。 「はい。お待ちどうさん。ナフから話しは聞いてるよ。お入りなさいな」  アナンドだろう女が手招いた。緑髪の美しい女だった。
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