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「あ、はい。あの、先ほどの方は?」
ルナは、自己紹介も忘れて、馬車で去った青年のことをアナンドに尋ねた。
「ソビニア・ゾル・アギハ様よ。出兵前に必ず奥さんの墓参りに来るのよ。あたしが住まわせて貰ってるこのボロ屋。以前は彼の妻が住んでいた場所だからさ。あ、ケイル。話したこと言うんじゃないよ」
「言わねえよ。それより、傭兵鬼死還狩りの話し、どうするんだ。ソビニア中佐まで動いてるなんざ聞いてねえぞ。ありゃ、小生の獲物だ。他に手を出すなと言っといてくれ」
ヘカトンケイルが、不機嫌に言い放つ。
(鬼死還、狩り?)
ルナは、話しを聞いて疑問を持つ。ソビニア仲佐のことは知らないが、街で何かが起きていることだけは、確かだった。
「とにかく。立ち話はなんだから、中に入んな。あたしはこう見えても忙しいんだからね」
アナンドが、蒼い羽織をはためかせて、二人を二階に案内した。
ルナは、勧められた席に腰を下ろす。アナンドが、ルナの向かい側に座った。
「お茶とかないけど、良いわよね。私が、鬼死還を調査しているアナンド・クオテラ・ラズビイ。で、何が知りたいの?」
医者を連想するような口ぶりで問われて、ルナは、ぎこちなく答えた。
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