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「酌でもしようか。お兄さん」
傭兵の側に座り、酒に眠り薬を仕込んで渡す。
「おう。気が利くじゃねえか!」
傭兵は、意気揚々と酒杯を飲み干した。そこへ、雇人がエプロンを取り外して先ほどの無理難題を答えに姿を現した。
「あのう、お客様。やはり、ツケは利かないとのことでして」
雇人が、腰を低くして、傭兵に告げる。
「なら。私が払うわ。俸給から抜くように掛け合ってくれる?」
ルナは、言いながら傭兵が眠るのを待つ。ルナが、調合した眠り薬は、時間が経たないと効果を示さない。
「わかりました。亭主にそう告げます」
雇人もルナのやり口を知っているからか、即座に引き替えした。これから、傭兵を軍に突き返すのだ。不祥事がばれれば、ルナの傍らで眠り始めた傭兵は、ただでは済まない。傭兵の座る木椅子の下には、砕けたグラスが転がる。
「――立派な、器物破損罪」
ルナは、小さく笑みを浮かべた。
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