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お風呂で充分体を暖めたあと、男風呂を出るとやはり待合室に黒羽がいた。
どうやら途中から暇になってコーヒー牛乳(パック)をちびちび飲んでいたようだ。
「待たせたな…」
「……別に………よ………か………」
「ん?おいどうした?」
突然顔を真っ赤にして固まる黒羽。
刈魔本人は気付いていないが、少し湿っている髪に温泉により少し火照っている顔…そしてただのシャツなのにモデルのように着こなしている刈魔の無駄のない筋肉。
平塚誠司にはない大人の…男としての色気に溢れていた刈魔に黒羽は見惚れていたのだ。
「おい?無視すんなら帰んぞ?」
「…………あ……待って……」
「なら早くしろ」
さっさと帰ろうとする刈魔を追い、黒羽も小走りで後を追いかけた。
――
お互い会話もないまま夜道を歩いていく。
もうそろそろ刈魔の家に着くが、黒羽はずっと刈魔の後を着いてくる。
「…いつまでお前は着いて来る気だ?」
「……………あんね…」
「ん?」
「…………ボクね……」
「あぁ…」
「………黒羽って……呼ばれたか……」
微妙に会話が成り立っていない。
少し頭痛がしてきた刈魔だったが、その原因である黒羽はこちらをウルウルした目で見てくる。
かなり不安そうだが少し期待しているようだ。
「…はぁ……黒羽…」
「…!!……あ、あんね……!…あんね……!……ボクも……かるまって……呼びたかと……」
「……もう……勝手にしてくれ…」
「………かるま……かるま……!!」
まるで子供のように名前を呼ぶだけで嬉しそうに微笑む黒羽に、少し微笑ましいながらも頭痛が収まる様子はなかった。
『ガキかこいつは…』
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