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「………かるま……!!……かるま……!!」
「人の名前だけで楽しそうにする奴初めて見たぞ……ってか俺ん家着いたけどお前どうすんだ?」
結局刈魔の家に着いてしまった。
何故か黒羽は期待したようにこちらを見上げている。
家にお邪魔したいらしい。
「………お前はド○クエの敵キャラか?」
「………?」
「帰れ、今日知り合ったばかりの他人を家に招き入れる義理はない」
「……………(ウルウルッ)」
「えぇい服を掴むな。泣いてもダメだ」
声は出ていないが、黒羽の涙腺は完全に崩壊した。
ポロポロと頬を伝い流れ落ちる純粋で綺麗な涙に刈魔は今日一番の盛大なため息をこぼす。
「………持て成しはしねぇぞ…」
「………!?………(コクコク!!)」
玄関のドアを開けて泣き顔を一気に笑顔に変えた黒羽を招き入れる。
内側から1つの鍵を閉めたことで連動して複数ある鍵が閉まる動作に黒羽は珍しそうに目をぱちくりしていた。
「とりあえずこっち来い…あんまりキョロキョロしてんな」
「…………(コクコク)」
なにやら一言も話さなくなった黒羽をリビングへと連れ出し、大人しく座っているようにと釘を刺し1人リビングに立った。
別に料理を作るつもりはない。食べて来たのだから。
冷蔵庫の中からオレンジジュースを取り出し、コップに注いで行く。
もちろん1つだ。
そしてリビングに再び訪れ、テレビを付けて一息つく。
「…………ボクのは……?」
「持て成さないっつったろ?」
「……………」
「文句があるなら帰りな」
ジド目でこちらを見てくる黒羽だったが、刈魔の一言にすぐさま顔を反らした。
よほど帰りたくないらしい。
『なにかあったのか?』
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