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たった今Mの素質を見せた黒羽を何とか落ち着かせ、刈魔は先程と同じ質問をする。
「…んで?俺に着いて来た理由は?」
「…………家出……しとる……」
「家出?」
ずいぶん端的な理由だが、中身は内容によって違ってくる。
先程よりも真剣に聞く体制になり、次の言葉を待った。
「…………お父さんが………」
「…あぁ…」
「……もう……お前の顔……見たく………なかって……出てけって………帰って…………来るなって………お父……さん………が……」
「もういい…」
「……ボク…ッ……誰も……グスッ……頼れる……人が……」
「黒羽!!」
女という生き物は嘘が得意な生き物である。
その気になれば嘘泣きなど簡単にすることが出来る。
だが、この少女は決して違う。断言出来る。
嘘泣きは………こんなに綺麗な涙なんか流せない。
「黒羽…もういい…無理矢理言わせてわるかった…」
黒羽をゆっくり抱き締め、後ろ髪を優しく撫でる。
黒羽は刈魔の胸で涙を流し続けた。
――
「……寝ちまったのか…」
泣き声が収まったと思ったら、次に聞こえて来たのは安らかな寝息。
お姫様抱っこで黒羽を持ち、二階へと運ぶ。
自室へのドアを足で開け、使い古しているベッドへ寝かせた。
『……具体的に何があったのかは知らねぇし何故俺を頼ったのかもわからねぇ…だが…』
そっと黒羽の髪を撫でる。
目の前にいるのは赤子か天使か何者か。
人形のような彼女を……何故か守りたいと思った。
「守ってやるよ…俺が守ってやる…だから今日はゆっくり寝な…悪夢なんか見るんじゃねぇぞ?」
悪魔と呼ばれた男は天使のような少女に出会った。
これは1つの恋の始まりに過ぎない。
2人の未来は…神のみぞ知る物語。
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