第一章

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「さて…こんなもんかな?」   それなりに量のあるカゴの中身を確認して、レジへ行こうとした時、ふとお菓子コーナーの人影に目が行った。   なにやらポテチとグミのどちらを買おうか迷っているようだ。   「………またお前か」   「…………またって…なんか?」   「いや、こっちの話…でもないな」   またもや維新黒羽がいた。   「なにしてんだ?」   「…………別に…」   「……………」   「……………」   「…買ってやろうか?」   「……………よかと?」   いつもならスルーする刈魔だが、彼女のあまりの真剣さに普段は絶対しない親切心が働いてしまった。   お菓子もカゴに入れレジに持っていく。   黒羽もちょこちょこと後をついて来た。   『小動物みてぇ…』   ――   「ほらよ」   「………………ボクが……頼んだんじゃ……なかとやけんね……」   「あぁわかったわかった」   ポテチとグミを手に取り恥ずかしそうに頬を染める黒羽。   ボクっ娘属性もあるようだ。   とりあえずさっさと帰ろうとしたのだが、腕の裾を掴まれて帰宅を阻まれてしまった。   めんどくさそうに後ろを振り返ると、真っ赤になったまま上目遣いでこちらを見てくる黒羽。   「………次は……勝つけんね…」   「ん?あぁゲームのことか。まぁいつかまたやるか」   「…………(コクコク)」   そして今度こそ歩き出した。   ――   「はぁ…疲れた…」   ようやく帰って来た刈魔は早速買って来た品物を所定の位置に直していく。   そしてタンスからシャツとトランクスを取り出し、脱衣室のカゴに入れて服を洗濯機の中へと脱ぎ捨てた。   刈魔は基本シャワーしか浴びないので、シャワーからお湯を出そうとするが…。   「…………ちっ…灯油が切れてやがる…仕方ねぇ…今日は近くの温泉に行くか」
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