序章

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ローブの男は王の所へ向かう前に、これから味わうであろう敗北のことを考えていた。 (何故こうなった?あの男は何者だ?) 男の顔は明らかに苛立っている。 もともとこの世界は光を司る神の子孫と闇を司る神の子孫。この二つの種族が暮らしていた。 大昔、とても大昔に大きな戦争があったと本で読んだことはある。 今ある街にも、その頃に造られた城や砦が残っている場所がある。 でも今では、姿や形は違えど大きな争いもなく、平和な世界だった。 それが三年前、もともと気性が荒い闇の種族をよく思わない一部の光の種族の権力者達が、闇の種族であるオークの青年に暴行し殺してしまうという事件が起きた。 その後、『本当は自分達も嫌いだった。』 と言わんばかりに各地で闇の種族への迫害が相次いだ。 そして、産まれた時より闘争心を持っている闇の種族がこれに黙っている訳がなかった。 それは、王様とて同じだった。 多くの街で種族同士の小競り合いが起き、街の警備兵だけでは収拾できなくなってきた頃、闇の王は光の王に一通の手紙を出した。 「このままでは戦争になってしまう。貴族達の不満も、そのうち押さえられなくなる。話し合いの席をもうけたい。」
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