act.1 ENTRANCE

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キュイッ…! 「ん…」 鳥の囀りに目覚める僕。ふかふかの藁に身を包んだまま寝るのがとても好きなのだ。 「グルル…ガウッ!」 「ヒュルエ、おはよ」 僕の飼い犬、ヒュルエ。スコルという種だ。昔から飼っている相棒。 「またここで寝てたのか。朝メシの時間だよ」 「…兄さん」 日差しが眩しい。それはそうとも。ここは地上よりはるか高い位置に存在しているのだから。 「早くしろよ、母さんが待ってる」 僕はゆっくりとけのびしてから立ち上がった。今日も新しい1日が始まるのだ。 小屋を出てすぐ。草原を少し歩いたところにある一軒家。そこが僕の家。 ここは“楽園(エデン)”。 “神杯の雫(エリクシール)”が住む天空の世界。雲の浮かぶ高さと同じ場所に存在する浮遊大陸。 楽園は通称、方舟と呼ばれている。地上には災害が沢山あるが、方舟はそれを回避する事ができる。 昔は方舟は意思なく天空をさ迷うだけだった。しかしエリクシールの力で高低、方向、移動を自在にした。 「ヒュルエ、朝ご飯だ」 野菜やら肉やらを詰め込んだバケツ。ヒュルエは我先にと顔を埋めるようにして食べる。 「あら、起きてたのね」 綺麗な長い金髪が風に靡いている。何もかも見透かすような青く、淡い色の瞳。白く透き通るような肌。美しき母が出迎える。 「兄さんが起こしてくれてね。」 「父さんも起きてるわ。さ、早く朝ご飯にしましょう」 幸せだった。 何でもないこの日常が。 毎日が楽しみで、希望に満ち溢れていて。 家に入り、リビングへいくと朝食が用意されていた。兄さんともう1人。 短い金髪を逆立てた、屈強にして無駄のない鍛えぬかれた肉体。凛々しい顔をした父。 「おはよう、アベル」
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