第二章~暗き森の月の下~

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「珍しい、今日は日が差してる」私はそんなことをぽつりとつぶやいた。ねぇ、今日は珍しいことばかりなの。朝起きたら、家の近くの木にめったにならない果実がなっていたの。ここはマルグリート王国の中の一番目立たない暗い森。でもね、一番目立たないけど、王国の広大な敷地の中で一番広いの。私は家の奥に引っ込んで、鏡を見た。瞳は赤い。私はこの瞳の色が嫌い。私はかつてこの王国の中で一番格式が高かったフェリス族の生き残り。もう、本当は千年も前に滅んだと聞かされていた。だけど、末代が人々に気付かれないように、暗い森の奥でひっそりと暮らしていて、私はその子供だった。私は町になんて出られない。前に町へ出た時に、私の瞳の色を見るなり私に聞こえるようにひそひそと悪口を囁き、物を投げつけられたこともある。私は仲間外れ。だから、誰もいないこの森で一人で暮らしている。さみしいなんて思わない。なぜ変わってしまったのだろうか。昔はフェリス族がこの王国の人口を圧倒的に占めていた。フェリス族はどんな民にも優しくしたという。貧しい者も富める者も皆、助けあいながら生きてきたんだと。
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