第二章~暗き森の月の下~

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彼は何か言いたそうだった。「あ・・・」足を動かした。「動かさないで。この森は野生の動物が出て危ない。今すぐ抜けた方がいい。」私は本当のことを言った。それにしても・・・よくこの細い体でここまで来たと思う。足をこんなにしてまで、どこへ行こうとしているんだろう。私は彼の足に包帯を巻いた。なんだか、彼が私をずーっと見つめているから、恥ずかしくなってきた。私の顔がおかしいだろうか。やっぱり、瞳の色が気になるのか。でも、私も時々彼の顔を見た。彼は、私の瞳を見てもバカにしない。きっと、知らないだけだろう。それでも、こんな風に優しい顔で私を見てくれるのは、嬉しかった。 私は立ち上がり、そのまま帰るつもりだった。すると彼は「あ・・・えと、手当てありがとう」と言ってきた。「君の名前は?」「私の名前は・・・セルシア」人に名前を聞かれたのなんて、生まれて初めてかもしれない。「セルシア・・・」彼が何かつぶやいた。私は「それじゃ・・・」とさっさと歩きだした。その途中で、彼の名前を聞けばよかったと思った。その晩、月灯りの下で私の頭の中は彼の事でいっぱいだった。なんだか、神様が運命で引き会わせてくれた気がした。また・・・彼に会えるかな。
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