レンテン・レイン

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「どうせやるなら、背も高くすればいいのに」 「こっちにはデリカシイって言葉があるんでしょう! なんでご主人様にはないんですか!」  頬を膨らませ、下から覗き込んで、目をキツと細める。やがて、自分の制服姿というのを堪能するように、病院帰りに来た公園の中心で僕のウォークマンを耳にさしつつ「半径八十五センチはー」と歌いながら回っていた。  それにも飽きると、スカートをつまんでみたり、長い髪をかき分けてみたりして、僕に話しかけた。 「ご主人様ぁ?」  酔っ払いのような甘ったるい声で彼女は僕に手を振り言う。 「ん、なに?」 「……はあ。やっぱりご主人様は最近流行りの草食系ってやつですね」 「え、なんでよ」  「もぉ、いーです」とそっぽを向くと、「ご主人様、行きましょう」と僕を先導した。  いや、ちょっと待ってよ。  僕は不思議に思ったわけだ。当然だし、というかむしろなんで気付かなかったのか自分の頭の回転の悪さにほとほとあきれるばかりだけど、いまさら悩んでも仕方ないと、とにかく彼女に聞くことにした。 「行くって、ハートはどこに行くの?」 「え、ご主人様の家でしょう。まあ、さすがにご主人様の家の在処は知りませんので、実際どこ行くかはわからないです」 「うち!?」  何を驚いてるんですか? と君は首をかしげているけれど、僕からすれば、むしろ、君が何言ってるんだいとその首を揺すりたい思いに駆られる。  いや、だって。さすがの僕にも血のつながらない女の子と同じ屋根の下暮らすことには計り知れない抵抗がある。 「でも、私、ご主人様以外、現世での当てなんてありませんよ」  彼女はえへへ、と笑う。
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