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「ところで、ツモルには好きな人とかいないの?」
――二か月経とうと、やはり僕は余り恋愛というのに頓着が無く、ハートの期待とはまるで遠い思想にいる。だが、それを無視できるだけの図々しさ、もとい大胆さは生憎僕には無いので、仕方なしに「で、僕はどうすればいいの?」と質問した。
さて、念願する当の本人たるハートはというと、クッキーに手を伸ばし、紅茶とのコラボレーションに酔いしれていた。話を聞け。ぴくぴくとこめかみを揺らす僕に、彼女は「別にご主人様に何かして欲しいということは此と言ってありませんよ」しかし、それではと食いかかろうとするも「まぁ、ゆっくりといきましょう。ほら、よく言うじゃないですか。まずは友達からって」と彼女はストローから口を離してくすくす笑った。それは振る際の口上だと思う。
かくして、僕はハートから何もヒントを得られなかったので、特にその手の話には詳しそうなツモルに恋愛を尋ねた。
尋ねられたツモルは「最近は中学生にも興味が出てきたな」とのこと。そうじゃないだろ。
「お前に聞いた僕が馬鹿だったと思う」
「やーい、バーカ」
カチンときたので鳩尾をついてやったら、その場にうずくまった。僕はそいつに一瞥くれてやると気にせず去る。
とまあ、ツモルという変態を見ていたわけだから、目の前に壁があることに気付かず、前を向いた瞬間顔面を打ってしまった。
「よう、富良野。前むかねえとあぶねえぞ」
壁が喋る。そんなわけもなく、壁だと思ってたのは、知る限りの優しさを適当にはっ付けたみたいな笑顔が気味の悪い、われらが母校を代表する不良、屋久佐だった。
「あ、富良野死んだ」
縁起でもないことをツモルは言う。ただ、僕もそう思う。
「そうだ、あとでちょっと来てくれね?」
地獄の底まで直球コースだ、ちくしょう!
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