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考えれば考えるほど謎である。
流血したまま、とりあえず学校の保健室に向かった僕は、思ったより深くなかった傷跡に大げさな包帯をぐるぐる巻きにされ、何か、頭に深刻な問題のあるような人にも見える姿にされた。
保健室のベッドに寝転がりつつ、今朝の出来事を思い返す。
僕は二週間で慣れつつある登校路をウォークマン耳に指しつつ歩いていたはずだ。悠々歩いていると、どこだったか、路地裏で猫と一緒にダンボールに入った少女を見かけた。
「……君、何やってるの?」
「猫と遊んでるのです」
「お母さ……」
言いきらない内、少女はこちらを向いて目を輝かせたかと思うと、その路地から影も形もなくしていた。結局僕は、少しそこに居た猫をなでて、学校に向かおうとした。その時は何か幻覚でも見ていたのだろうと、自分の頭を心配していただけだった。
そして、進もうと一歩を出した瞬間、「おっすです、ご主人様」であった。
あれは何だったのか。幻覚だとしたらこの頭は。事実、僕はその幻覚に牙をむかれた。もしかしたら幻覚の中に隠れた現実の凶器が何かのはずみに飛んできたのかもしれない。そう思って、僕は薬品の匂いのする、白いシーツに潜り込んだ。
「ご主人様、寝ている暇などないのです!」
耳元で、例の幻覚少女が再び叫ぶ。こればかりは本当に驚いて、「後五分」とかそんなありきたりなボケをかます余裕もなかった。
「訳わかんない」
もう夢と現の境目がどこか、自分に問いただしたくなった。
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