レンテン・ハート

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「ハート? なんというかレンテンに恥じない名前だね」  話を逃がすように挨拶したハートの意思を汲んで、僕は彼女の愛らしい名前を誉めた、つもり。ハートは「でしょう?」と嬉しそうだ。その後、「それなのにディアは……」とブツブツ言っていた。あまりに顔をしかめていたので聞かなかったことにしよう。   「それで、ハートは僕を選んだけど、言ったとおり僕はまだあまりそういうのに興味がわかないんだよ、どうするの?」  ハートには何かこの仕事をやらなきゃいけない理由があるらしいし、正直僕に構わない方がいいんじゃないかと思う。僕はハートの為にも他のところへ行くことを期待したけど、反して彼女は胸を張った。 「もはや何でもオーケーです。私はもうご主人様をご主人様と決めたのだから、私はご主人様の恋路を道案内したいのです」  はぁ、なんか頭痛くなってきた。もう彼女のエゴ道を突っ走っているじゃないか。そんな我が道を行く彼女に道案内など勤まるものかと、僕は頭を掻いた。 「ところで、僕をご主人様と呼ぶのはなんで? 僕はそんなえらい人じゃないんだし……」 「だってご主人様、自分の名前教えてくれないじゃないですか」  あれ、そうだったっけ。  非日常な現実に頭を痛めているうち、自己紹介した気になっていたようだ。僕は「富良野」と教えた。 「やっぱりご主人様はご主人様の方がいいです。なんかそっちの方が私頑張って働いてるみたいじゃないですか」 「ええー……」 「むぅ駄目ですか? じゃあ様付けはやめます。これなら、ほら、さっきより偉くなさそうでしょう」 「分かった分かった。もういいよ、なんでも」
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