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「なんでもいいなら、ご主人様でもいいですよね! よろしくお願いします、ご主人様」
僕は不本意ながらも、諦め、彼女との契約を結ぶこととなった。契約とは至極簡単で、ただ、小学生のころにやったように、小指と小指を組み合わせるだけである。まさしく指切りげんまんである。ハートは「嘘ついたら矢を千本のーます」と言っていたのだから、間違いない。
だが、そのあとの現象は、ただの、とは言い難い。足元にピンクの模様が浮かび上がる。見たこともないような文字が周囲をぐるりと囲み、三つの大きなハートの下部を中心に添えて細かな装飾がちりばめられている円形の模様だった。光が天を衝くように伸び、僕の周りを光の粒子が浮かんでいる。
足元の模様がしだいに小さくなる。中心に吸い込まれるように消えていく。やがて、それが完全に消えると、そこに小さな水晶のような石が落ちていた。それは模様と同様、ハートの形をしていた。
「これは……?」
「レンテンとの契約の証です。それぞれ、自分の形の石を持っているんですよ? 私の石はかわいいでしょう」
ハートは嬉しそうに僕の手の平に乗せた石をつつく。透明のそれは、僕の恋愛線をレンズのように拡大させて、少しだけ揺れた。
「無くさないで下さいよ? 大切なものなんですから」
ハートは僕の手を握り、この石を包ませた。ゆっくり閉じられる指に、僕は彼女の暖かさと、石との温度差を感じていた。
「でも、まだ透明ですね。当たり前ですが。これは私がご主人様の恋愛を叶えれば叶えるほど、きれいなピンクになります。早く、もっと可愛くなった石見たいですね」
彼女は、僕の手を握ったまま、くしゃっと笑った。
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