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いたずらに、時は過ぎる。
人の意思は関係無く…
開いた傷口は癒え、辛い記憶は消える。
ただ話すだけの私と、ただ聞くだけの貴方。
お互いの時間は進んで行く。
辺りの景色は変わらず、自分だけが老いてゆく…
世界は広い。
今もどこかで新しい命が生まれ、どこかで命が消えている。
まるで、桜みたいに。
咲いた時から散っていく…
桜みたいに…
夜の月明かりに照らされた綺麗な桜を見て、私は気付いたの…
ただそこにいるだけで人々を魅了する桜と、話していないと存在すら認められない私。
どっちが必要なのか?
答えは簡単。
「桜。」
そうに決まってる。
ただ、私も意味無く生まれてはいない。
きっと、人にこうして話すためだけに存在している。
それ以外に理由は無く…
数百年生きた桜が語る。
『お前は、お前のままでいい』
私は首を小さく横に振った。
「今のままじゃだめなの。今のままじゃ…」
桜はまた黙って、散った。
私もまた、たくさんしゃべる。
桜が咲いて…
散り終わるまで……。
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