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昔、大きな目を見た。
その目は、私を見たまま動かなかった。
けれど、違和感のある目だった。
その目には、白目が無かったのだ。
すべて黒。
そんな目が私をジッと見ていた。
目というものはそもそも、なんのためにあるのか?
見るため?
…それだけ?
わからない。
目は、静かに消えたけど…
一言残して消えてった…
『お前の顔、覚えた…』
私は、首を小さく横に振った。
「私は、私じゃないの。」
目は悲しそうに消えた。
私の前が暗くなった。
そこで気付いた…
「あれ…、私の目だったんだ…」
気付いた時にはもう終わっていた。
私の目は消え、私の言葉通り…
私は私で無くなった。
繰り返し繰り返し呟く…
「助けて…、助けて……」
返答は無い。
小さな私が、私を見てこう言った。
「貴方が無くしたのは、目だけじゃないよ?」
気付いた時にはもう終わっている。
暗闇に、私のすべてが落ちていた…。
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