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「はいはい離れて。神崎さん、困ってるでしょ」
落ち着いた声でそう言いながら、生徒会室から姿を現したのは鈴木優奈。
彼女とは工場での職場が同じで、何度か面識のある清那は優奈に向かって軽く頭をさげる。
清那の先輩にあたる2年生の優奈は、生徒会で副会長を務めていた。
「麻沙美さん、相変わらずパワフルですね」
押しのけられた時に壁で打ったのか、黒田がこれみよがしに腕をさする。
「あ、清那~。良かった、来ないかと思った」
盛り上がる廊下の様子に、舞も笑顔で生徒会室から顔を出す。
「君が神崎清那さん?」
そう言って登場したのは森山孝司、生徒会担当の教員だった。
真面目そうな外見は中身そのまま、昼間定時の中でも際立ってまともな教員である。
「あ、黒田先生」
「やっと気付いていただけましたか」
ふと横に目をやった森山が黒田の存在に気付く。
散々ないがしろにされた黒田がわざとらしく声をあげると、森山は苦笑いを浮かべて彼に会釈した。
「我がクラス1の優等生です。宜しくお願いします」
「はい。さ、中に入って」
黒田の言葉を軽く受け流すと、森山は清那を部屋の中に案内する。
廊下に出ていた麻沙美と優奈も、それに続いて部屋へと戻っていく。
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