生徒会へようこそ

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桜の枝が花びらで彩られた4月。 様々な始まりを感じさせられるその花の香りは、新しい門出を迎えた全ての者を前向きな気持ちにさせていた。 駅から歩いて10分弱という好立地に建つ会社の工場で正社員として働く神崎清那は、その工場と提携している定時制高校にも通う15歳。 俗に言われる勤労学生の彼女は中学卒業と共に親元を離れて会社の寮に入り、仕事と学業の両立にいささかの不安を感じながら生活していた。 彼女の何事にも無関心でサバサバとした性格は周りの者を受け入れ難く、特定の人間以外とはあまり会話をする事がない。 ただ、1人でいる事が好きな彼女が自ら今の状況に甘んじている部分もある。 彼女が通う高校は、一般的に知られている夜間定時とは違う昼間定時と呼ばれる週毎に午前、午後と登校時間が替わる特殊な学校だ。 工場の交代制シフトの勤務体系から、こうした特殊な時間割が構成されている。 工場操業担当の従業員はA班、B班、夜勤と分かれていて、A、B班の勤務時間が1週間毎に午前、午後と入れ替わるシステムだ。 ちなみに清那は、A班に所属している。 「せ~な~!」 朝6時からの仕事を終え、工場から出てすぐの廊下に彼女の名を呼ぶ明るい声が響く。 「ご飯一緒に食べよ」 彼女の名は大川原舞。 少しぽっちゃりとした体型に持ち前の明るさとノリで、入社して1ヶ月たらずだというのに工場の同僚や上司には既にウケがいい。 「いいよ」 「今日何かな~」 清那と舞の仲がいい理由は、2人が寮の同じ部屋で生活をしているからだ。 2人1部屋で割りふられている彼女達の部屋は、共同スペースと3畳ほどの区切られた私室スペース2つによって構成されている。 設備としては共同スペースの中に流し台と電気調理器、鏡付きの洗面所とトイレ、そして2ドアの小さな冷蔵庫がはじめから備え付けられていた。
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