しるべとネコ

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こんな、本の中でしか出会えないような人に出会ったしまったんだ。 当たり前のように、声が出ない。 「あんた、もしかして人間?」 猫の少女は、そう問いかけてきた。 「人間?」と、聞くあたりから察するに、この子は人間ではないようだ。 いや、見たらわかるか。 「はい、人間です。名前は、橘しるべ。よろしくね!」 とりあえず、自己紹介。 「あなたは?」 こんどは、私が猫の少女に問いかけてみる。 「あたし?あたしは、タマ。それよりもあんた、動揺しないんだ?」 “タマ”という、すっごく当てはまっているような、当てはまっていないような、名前に笑ってしまいそうになったけど、失礼かと思い、何とかこらえた。 「こんな、楽しそうなことになっているのに、動揺している暇なんてありませんよー!」 人差し指でお日様を指し、得意気にそう言った。 「ふー…ん、まぁどうでも良いけど。特に行く当てがないならついて来たら?」 タマちゃんはそう言うと、振り返って歩き出した。
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