しるべと思い出

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季節は夏。 八月上旬、つまりは夏休み真っ最中。 アスファルトの道に、ぽつぽつとある建物。 セミの泣き声にじっとりとした汗。 ちょっとした、田舎の風景。 私、橘しるべ(たちばなしるべ)はそんな高温多湿の灼熱地獄の中を歩きながら、一人でおばあちゃんの家を目指していた。 「あー、あつい」 中学二年生の夏休み。 本当は、友達と遊びたいところだけど、家庭の事情で1週間ほどおばあちゃんの家に泊まることになった。 おばあちゃんの家はすごく遠くて、電車を乗り継ぎ、バスを乗り継ぎ、最後は歩いて……。 合計で四時間くらいかかってやっとたどり着くような場所にある。 なので、あまり会いに行くことは出来ず、3年前の夏にお母さんと来て以来、一度もおばあちゃんの家へ行っていない。 「えーっと、ここどっちだっけ?」 そして、目の前には分かれ道。 とりあえず、お母さんに書いてもらった地図を広げてみる。 「……北ってどっち?てゆうか、今どこー?」
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