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近くて遠い、月冴ゆ夜半。
防寒対策をしているとはいえ、まだ冬だ。あまり長い時間外にいると、身体の芯から冷えてしまう。
早くも冷たくなり始めた指先に、はあっと息を吹きかけて、部屋へ戻ろうとしたその時。
ガツンッ、…ドサッ。
鈍い音にぎくりとして、彼は振り向いた。
が、視界には見慣れたバルコニー以外うつらない。落ちたり倒れたりするようなものは何も置いていない。
まさか、と思いつつ、彼はもう一度バルコニーの手摺りに近づいて、おそるおそる下を覗き込んだ。
月明かりに皓々(コウコウ)と照らされる、手入れの行き届いた庭園の芝生。植栽の間に並べられた御影石。
―――あれ、人か!?
バルコニーの真下、テラスの敷石に横たわる人影を、彼の目はとらえた。
「嘘だろ、どこから入ったんだよ…」
矢庭に自分の部屋へ飛び込んで、三階から階下への階段を駆け下りる。リビングダイニングの明かりをつけ、セキュリティシステムを解除してカーテンと掃き出し窓を開けた。
置かれたサンダルを履くのももどかしく、テラスへと飛び降りる。
「…………。は?」
彼は思わず絶句してしまう。
テラスの上で目を回して転がっていたのは、長い髪をツインテールにして、ニーハイソックスを履いた、どこからどう見ても『メイドさん』だった。
―――――To be continued...
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