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「しゃ、しゃ……喋った……!!」
「え?」
振り向いたメイドは、大きな黒い瞳をいっぱいに見開いて彼を凝視する。
「……昂輝さん? もしかして、私が見えるんですか?」
ソファーからおりて、無防備に近づいてくる。昂輝は恐怖に顔を歪めて後ずさった。
「あ、あんた、なっ、何者だよ! 脈もない、息もしてないのに動けるってどういうことだよ!」
昂輝のわめき声に、メイドはびくりと身体を震わせて黙り込んでしまう。
「…おい、何とか言ったらどうなんだ」
「きゃーん超嬉しいーーー! 昂輝さんとお話ができるなんてー!」
唐突に抱きつかれて、昂輝はメイドに押し倒されて床で背中を打ってしまった。そのはずみに、かけていた眼鏡が床に落ちる。
「ずっとずっと、お話したかったんですー! やーんやーん嬉しいですぅー!」
ぐりぐりと強引な頬擦りを延々と繰り返されながらも、少しずつ冷静さを取り戻した昂輝は、まず手を伸ばして眼鏡を拾う。
「悪いけど、離れて」
すげない言葉にメイドはしゅんとなって、身を離し隣に正座した。眼鏡をかけ直し、昂輝は改めて問う。
「で、あんたは一体何者? ……まさか、ヒューマノイドタイプの宇宙人?」
内心、微かな期待を込めて。
「ウチュウジン? えっとー……地球外生命のうち知性を持つものの総称のこと、でしたっけ?」
「宇宙人じゃないのか?」
「違いまーす。私は、天命の書記官です」
そう言って、メイドはにこやかに笑った。
―――――To be continued...
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