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『仰げば尊し』が響く体育館の中、列の後方に並んだ三浦 壱哉(ミウラ イチヤ)は、欠伸をこらえるのに必死だった。
久しぶりの登校日。
学年全員が朝イチで体育館に集められて始まったのは、よりによって卒業式の歌の練習。
音楽の授業でも歌わされ、
全員集合しても歌わされ……
学校にとっては、よほど大事な事なんだろう。
しかし、その重要性がさっぱり理解出来ない壱哉にとっては、
苦痛以外の何ものでもなく。
まだ覚めない眠気をこらえるので精一杯だ。
あ~…
早く暖かい教室帰りてぇ。
睡魔に襲われる頭の片隅でボンヤリ思う。
体育館の各所には灯油式のストーブが置かれていたが、外に雪がちらつく季節柄、その程度の暖房器具の威力など無いに等しく、ポケットに突っ込んだ指先は赤くかじかんでいた。
つかさ、
歌の練習とかマジで何の為にやるワケ?
卒業式でキレイにハモれたから、なんだというのだろう。
ご褒美に金一封が貰えるワケでもなければ、
モテるワケでなくて、
ただひたすらに無意味。
こんな事するくらいなら、教室で寝てた方がまだ有意義だと本気で思っている、
三浦壱哉は、そんな男だった。
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