弐・とある知人と鬼死還に関するレポート

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 びぃぃん、と壁に刺さって揺れるナイフ。  たまたま顔を動かしたおかげで当たらなかったらしい。  ――なるほど、今日の運のなさは、この一撃を避けるために使われる予定だったからか。 「シャウラ! 危ないだろっ!」 「レスートが遅いのが悪いんじゃん」  ぎぎぎと、軋んだ音を立てそうな動作で、クルトーラはナイフの突き立っている方とは逆の方向を見る。  入口横の柱にもたれかかり、レスートによく似た少年が拗ねたように唇を尖らせてクルクルとナイフを回していた。  シャウラ・サレオス・ユラン大佐。レスートの双子の弟である。 「人間相手にこれは、イタズラじゃ済まないよ」 「ちょうど良いじゃん。鬼死還になれるかもよ?ね、オニーサン?」 「慎んで遠慮いたしますっ!」  ブンブンと首を横に振る。  『かも』程度の確率で殺されかけては堪らない。そもそもなりたくもない。  これを毎回喰らいながら、『イタズラ』で済ませられる軍や国王は凄いと思う。
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