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「それ持ったら帰っていいよー。拾ったけど僕らには飼えないから」
「はい? それはいったい……」
聞き返すより早く手渡される首輪。
模様代わりに掛かれているのは、間違いなく神術関連の刻印だ。
顔が、思わずひきつる。
「大切に飼ってね。多分人にも懐くはずだから」
飼うことは決定事項なのか。そして、『たぶん人にも~』ということはやっぱりこれは犬ではないのか。
「あの、僕には生き物を飼う余裕は」
「ろくに役立つ情報持ってこなかったんだから、これぐらいやってくれるよね」
すっと伏せられる、底の見えない血潮のような深紅の瞳。
「……はい」
もう頷くしかなかった。
「じゃ、よろしくー」
本当に忙しいらしく、ささっと出て行ってしまう双子大佐。
残されたクルト-ラは、同じくテーブルの上に置いてけぼりを食らった毛玉に視線をやる。
ぶんぶんと尻尾を振りながらこちらを見上げる犬もどき。
「新たな出会いは、幸運なのか、不運なのか、どっちなんでしょうねえ……」
犬と思しき生き物を抱き上げて、クルト-ラは深々とため息をついた。
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