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「どうですピクニックにでも行きませんか?」
首輪をつけた茶色い犬もどき――結局パドストールと名付けたそれが、ハトを追いかけて駆け回っている。
二つ並んだベンチの右側に座った女性は、その秀麗な顔を怪訝そうにゆがめる。
「茸採りならお断りよ? 私も暇じゃあないの」
見事に一蹴された。
肩に付くか付かないか艶やかな黒い髪。橙色の気の強そうな瞳。この前逢った時は踊り子衣装を着ていたが、今日はさすがに肌寒いのか紺色の外套を着こんでいる。
ルナ・レスティア。クルトーラの顧客であり、数少ない出生を把握している人物であり――聖イストリアの密偵である。
ルナは逃げてきた鳩を抱き上げると、パドストールを手のひらを振って遠ざける。
「いいじゃないですか。この季節は紅葉がきれいですよ?息抜きにはぴったりですよ?」
左側のベンチに座っていたクルトーラはあまりの即答ぶりに心が折れかけるが、なおも食い下がる。
「他の人に頼めばいいじゃない」
「連絡付かない人のが多いですし、付いた人にも断られました」
ルナに追い払われたパドストールが膝に乗っかると同時に、深々とため息をついた。
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