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ネフティスの市民層はイストリアのそれに比べて遥かに自活力があり、手に職をつけている。しかし、全員が全員そうであるというわけではない。
傭兵、孤児、難民。職にあぶれ、冬を越すにあたっての費用も住まいもないものが、野盗に転じるのはよくある話だ。
「こんな首都に近い場所で起きるなんて、珍しいですね」
「軍の注意が逸れてるからじゃない?」
窓を覆う布を下ろしながら、事もなげにルナが言う。
いくら外に注意が向いているとはいえ、内部がごたごたしては危ないと思うのだが。
「……実はルナさんも何か企んでたりします?」
「今は動く気ないわよ」
「今は」と言う単語に、不安が過ぎる。
人の事を言えた身ではないが、薄氷の上を全力疾走しているような人だ。
見てる、時々巻き込まれる身としては大変ハラハラする。
「ぎゃっ」
そうこうしているうちに、外で悲鳴と何かが荷台にぶつかる音がする。
荷台の中の空気が、凍る。
「……茸博士は普段どう対応してるの? 野盗に襲われた経験ぐらいあるでしょ?」
「ああ、そういう場合はちょっと茸の力を借りてます」
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