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少しばかり焦りをにじませてこちらを向いたルナの顔が、露骨に歪む。
「そんな時まで茸?」
「そ、それぐらいしか手がないんです!」
ナイフは調理と植物採取のための使い方しか知らないし、数少ない戦闘手段である神術もイステア教系のものだ。
神術そのものも一般普及していないこの国でそんなもの使おうものなら、悪目立ちするどころの騒ぎではない。
その点、もともと大量所持していて効能のもちゃんと把握している茸のが扱いやすい。
「……小僧、よくそのような軟弱さで生き残れたものだな」
思わず、といった様子でへカントケイルの口から呆れの言葉が零れる。
その言葉を聞いて、ルナが至極真面目な表情で、
「ちょうどいいから道中に鍛えてもらったら?」
「ええっ!?」
あまりの無茶ぶりに思わず声を上げる。
「いやいやいや無理ですよむぐっ!」
「し! 黙って!」
足音に反応したルナ、口を押えられる。
ばさりと、上へと乱雑に持ち上げられた幌に、誰かが息を飲む。
十数もの瞳が、同じ方向を見つめる。
明るい外の光を背に大柄な男の影が、中へと伸びた。
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