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アムリタはオークの森だ。
かつては木材の産地として有効活用されていたのであろうこの森も、戦争による人手不足からか、今はほぼ放棄され黄色に染まった葉が鬱蒼と青空を覆っている。
腐葉土に覆われた大地はふよふよと柔らかく湿気り、海からの風も手前の方で遮られ、少々湿気を運んでくる程度だ。
「すごい」
苔に足を取られぬよう朽ちかけた倒木の上に乗って、クルト-ラは興奮気味に声を上げた。
「ルナさん見てください! 茸だらけですよ! 茸!茸!」
「ええ、そうね……いやになるぐらい生えてるわね」
ルナは足元に視線を落として、木の根元にびっしりと生えた茸に辟易したような表情を浮かべている。
倒木の側面、木々の根元、腐葉土の上。いたる所からにょきにょきと、色も形も様々な茸が頭を出している。
一株一株なら可愛らしくとも、これだけ大量にあれば普通は薄気味悪くなるのだろうが、自他ともに認める茸好きのクルト-ラにとってここはまさに天国だ。
「ほらほら見てくださいよ、これ! ここの突起なんだか動物の耳みたいで可愛くないですか? 僕も初めて見た品種ですよこれ!」
「そうね、うん、分かったからさっさとしまいなさい。しなびるわよ」
玩具を自慢する子供のように、引っこ抜いた茸を見せびらかすクルト-ラを、ルナは片手でいなす。
彼女は先ほどから視線を上に移し、木々の上を駆けるリスやムササビを目で追っている。
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