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「うわ……」
「……もう一杯になってしまいましたね」
籠一杯に詰まった茸を見て、ルナは何故か一歩下がった。
茸はたとえ同種のものでも発生してからの日数や地質、日照条件により色や形が大きく異なってくる。
そのためサンプルとして密集している似たようなのを一二本採っていくだけでも、集まればかなりの量となる。
案の定、一刻と半分ほどで持ってきた籠は一杯になってしまった。
「一旦帰らないとですね……次は籠を一杯に持ってこないと」
「誰に持たせる気?」
「そりゃあルナさんとヘカントケイルさ……痛っ!」
言いかけて、ルナにポカンと頭を叩かれた。
「何勝手に人を使おうとしてるのよ」
「えー? だってヘカントケイルさんとか僕より沢山持てそうですし、そもそもルナさんも結構人使いあら……いえなんでもないです」
形の良い眉が寄って眉間にシワが浮かびかけるのを見るや否や、クルトーラはすぐさま言葉を引っ込めた。
女性と口論で勝てた試しなどないし、手を挙げるなどという非紳士的な手法に落ちる気もない。
簡潔にいうと、クルトーラに勝ち目はない。
晩秋の風が身に染みる。
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