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まるで地鳴りのような魔獣の咆哮が森の木々を揺らして、雷に呼応する雨のように色付いた葉や木の実がバラバラと地面に降り注ぐ。
「なっ……」
「見つかっちゃいましたね……」
一応手に聖印を結んでじりじりと後ろに下がりながら、クルト-ラはその巨体を見上げる。
目をそらせたらまずいのだっただろうか。それとも、目を合わせてはいけないのだったろうか。
目の前にそびえる威圧の塊に、思考がまとまらない。
そうこう考える内に、ブンっと音を立てて振り下される、鋭い爪を備えた手。
思わず、息を飲む。
「ぬぅんっ!」
前へと移動したへカントケイルの義手のうち四本が、振り下ろされた丸太の腕を掴んで止めた。
そして、残りのうちの二本が義手に仕込まれた剣を抜き放ち、魔物の銅に一閃を放つ。
ガシャンと、金属の擦れあう音。耳を劈くけたたましい悲鳴。
腹から噴き出した赤黒い液体が、落ちたばかりの木の葉を濡らす。
「すごい……」
「まだだ、下がっていろ」
痛みにのけ反る魔獣に蹴りを一発入れて間合いを取ったへカントケイルは、なおも鋭く獲物を見据える。
腹から血を流してなお、魔獣の目に宿る生気の光は衰えない。
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