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「さすが魔獣! それぐらいの骨がなければつまらぬっ!」
豪快な高笑いの後、もう一閃。
再び断たれる魔獣の胸筋、そして、首の骨。
「ぬ?」
「へ?」
予期せぬ位置からの一太刀に、さらに攻撃を仕掛けようとしていたへカントケイルの動きが止まった。
ズシンと倒れるその巨体の向こう側。
もう一人、剣に血を滴らせる人間が立っていた。
僅かに揺れる金糸のような短い髪。青灰の、色は違えど自分とよく似た形の瞳。
その顔を、クルト-ラはよく知っていた。
男の目が、へカントケイルの数歩後ろに立つクルト-ラを捕えて僅かに見開いた。
「その服は、確か……」
「ライツフォル伯!」
どこかから、他の声も聞こえてくる。
足音には金属音が混じり、声もどれもが男性のものだ。
「……ライツフォル?」
血を見て僅かに顔色を悪くしていたルナが、怪訝そうにこちらを見てくる。
もう答える気も起きない。厄日なんて言葉では片づけきれない現実が、次から次へとやってくる。
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