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いまだかつてこんなにも疲れたことがあっただろうか。
張り切って茸採取に全力を尽くし、魔獣や武装したイストリア人に遭遇し、数年来使っていなかった神術を媒体無しで使い、さらに足場の悪い森を全力疾走。
疲れない訳がない。夕飯も食べずに、柔らかい布団に潜り込んで寝てしまいたい。一刻も早く今日を過去にしてしまいたい。
だが、それを許してくれないのが社会である。
「――博士、クルトーラ博士っ! 聞いていますか?」
「聞いてます……ちょっと意識飛んでましたが」
「それは聞いていないと言うんです」
対面に座る妖艶な容姿の軍人が、吊り気味の赤い瞳でこちらをキッと睨んだ。
レヴル・グランツと名乗った彼女は、クルトーラには何か分からない書類を広げている。
あの森であったことの事情徴収、ということなのだが、茸を取っててたまたまと言うほかに何を話せば良いか分からない。
何より、今の疲労状態だと口を滑らせていらないことまで言ってしまいそうで、恐い。
「……真面目に聞いていただけないなら、公務執行妨害とさせていただきます」
「すみません、真面目に聞きます答えますっ」
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