13人が本棚に入れています
本棚に追加
「まあ、大体のお話はへカトンケイル殿から聞いているのでそこまで聞くことはないのですが」
あわてて背筋を伸ばすクルト-ラにはぁ、とため息をついてレヴルは書類を机に置く。
「私としては、こんな時期にのんきにキノコ狩りにいそしんでいる神経そのものから疑っています。貴方は一度牢屋か何かで頭を冷やしてはいかがですか?」
「今回はそちらの上司さんからの依頼です。ちゃんとゲイド(役所)にも届け出を出してありますし」
唐突に言われた小言に、思わず言い返す。
そもそも「そんな時期」とはいうが、ネフティスとイストリアの関係はいつも「こんな時期」にあるではないか。
有事は研究の手を止める理由にはならない。
疲れか神経の使い過ぎかは知らないが、少しばかり箍の外れた感情に任せてクルト-ラは言葉を連ねる。
ちょうど9回目の息継ぎを入れたところで、諦めたように肩を落としてレヴルが静止した。
「……分かりました、もう結構です。今日のところ休んでもらって構いません」
「では、僕はここで……」
立ち上がりかけたクルト-ラを、硬い声が引き止める。
「ただし」
「本当に今後、フィールドワークの方は自重してください。どうにもイストリア軍の様子がおかしいので」
「……分かりました」
自分でも実現できるか分からないまま返事を返して、今度こそクルト-ラは席を立った。
最初のコメントを投稿しよう!