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「遅かったわね」
借りた部屋に戻ると、何故かルナがいた。
テーブルに酒と肴が広げて、一足早い晩酌中といった様子で。
「ルナさんの部屋って隣ですよね? 僕部屋間違えました?」
「あってるわよ?私が話があって部屋で待っていただけ」
「明日じゃダメですか?」
「ダメ。私だって疲れてるけれど、いろいろあんたに効きたいことがそれこそ山のようにあるのよ」
「……寝転がりながらで良いですか? いよいよ頭が痛くなってきた」
「答えてくれるなら逆立ちしながらだろうが、剣の素振りをしながらだろうが構わないわ」
にこりと笑うルナにクルト-ラは先にベットの枕とどうかしかけていたパドスト―ルを抱き上げる。
本当に癒しが足りない。茸はこの場にないから柔らかいパドストールの毛で、それを補給する。
「で、あの昼間にあった人ってライツフォル家の人よね」
「よくわかりましたね」
「胸に家紋ついていたもの」
こともなげにルナはいうが、あの状況下でそこまで見ているのはなかなかできないことだ。
伊達に密偵をやっていない、というところなのだろう。
「で、あそこと茸博士との関係は?」
ゆらりと心が揺れるが、自分に気づかぬふりをして答える。
「実家ですよ、あそこが。僕が貴族出身なのはご存知ですよね」
クルト-ラがルナのある程度のことを知っているように、ルナもクルト-ラのことをある程度知っている。
しかし、互いに全部を知っている訳ではない。
案の定、ルナの目はただでさえ大きいのにさらに大きく見開かれた。
「博士、そんなに身分高かったわけ?」
「爵位は伯爵ですねぇ」
「それでその世帯臭さ?その頼りなさは、いかにも貴族のお坊ちゃまって感じだけど」
正直な人である。
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