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書類をトントン、と揃えながら、キツ……、吉川さんが正面に座っている私をチラリと見ながら言った。 見ながら、というか、眼光の鋭さから睨みながらと言った方が正しい気がするが。 「溜め息です。 自分だけではなく周囲の人間の仕事の士気も下がりますから」 「……は、はい」 こわ……。 私は吉川さんが目を逸らしたのを確認すると、わざと首をすくめた。 「で、ここなんですが。 接待交際費じゃなくて福利厚生費であげてください。 あと、ここは……」 私が入力した仕訳についての訂正を、書面をこちらへ向けて赤鉛筆で指し示す吉川さん。
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