コーヒーに角砂糖

１

「あんた達、もう2人とも成人してるんだから子供っぽい言い争いはやめなさい」

キッチンに立っているお母さんが、顔をこちらに伸ばして呆れたように注意する。

「だって、春人が」

「“だって”なんて社会人が使う言葉じゃないわよ」

お母さんはさらりと言って、顔を洗い物に戻した。

「……」

舌を出して“ざまあみろ”の顔をしている春人を睨みながら、私はすごすごと階段の方へ向かう。

会社で頑張って帰ってきているのに嫁に小言を言われる旦那の気持ちが少し分かる。

家でぐらいゆっくり好きなことをさせてくれてもいいじゃないか。

ただでさえ今日はキツネのせいでストレスマックスなんだから。

私は、小さくぼやきながら部屋に戻った。