プロローグ

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来る。 また、あの男が来る。 冷ややかな視線で人を小馬鹿にしたような、それでいて全くもって他人に興味を持っていなさそうな。 ただ仕事だけを淡々とこなす、笑顔とは無縁のキツネ男。 先にいつもの小さな研修室で待っていると、コンコンコンといつもと同じ3回のノック。 ……来た。 はい、と我ながら小さな返事が聞こえたのかどうなのか、彼は今日もシワ1つないスーツ姿に黒の重そうな皮鞄を持って部屋に入ってきた。 ――毎月、月末。 時間は午前11時。 場所は長机が2台向かい合わせに並べられているだけの6畳ほどの研修室。 「こんにちは。 では、始めましょうか」 彼は私の指導者で、私は彼が大の苦手だ。    
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