176828人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
来る。
また、あの男が来る。
冷ややかな視線で人を小馬鹿にしたような、それでいて全くもって他人に興味を持っていなさそうな。
ただ仕事だけを淡々とこなす、笑顔とは無縁のキツネ男。
先にいつもの小さな研修室で待っていると、コンコンコンといつもと同じ3回のノック。
……来た。
はい、と我ながら小さな返事が聞こえたのかどうなのか、彼は今日もシワ1つないスーツ姿に黒の重そうな皮鞄を持って部屋に入ってきた。
――毎月、月末。
時間は午前11時。
場所は長机が2台向かい合わせに並べられているだけの6畳ほどの研修室。
「こんにちは。
では、始めましょうか」
彼は私の指導者で、私は彼が大の苦手だ。
最初のコメントを投稿しよう!