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「……」 突っ立ったまま、私の目をじーっと見る吉川さん。 「っあ、すみません。 先に研修室入っていてください。 準備をしてすぐ行きますので」 眼光の鋭さに考えを読まれている気がして、慌ててトイレに逃げ込んだ。 鏡を見て気付いたが、涙で化粧が落ちてパンダ目になっていた。 ……恥ずかしい。 さっきの嫌な気分を引きずったまま、さっきの嫌な雰囲気の残った事務所の中の自分のデスクに戻り、吉川さんにチェックしてもらう書類や伝票や元帳を運ぶ。 ある意味、助かったかもしれない。 怒られた生徒を憐れむような視線から逃げることができて。
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