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「先輩、……大丈夫ですか?」
「え?何が?」
「昨日、いろいろと大変そうだったし……」
次の日。
帰り際、ロッカールームで後輩の葵ちゃんが心配そうに声をかけてきてくれた。
おそらく部長に怒られたことを言ってるんだろう。
「あ、ああ……。
確かに今月私さっぱりだったし。
ていうか今月に限らずいつもだけど」
あはは~、と自虐的なことを言いながら私服に着替える。
「ごめんなさい。
私がまだ全然使えないから、先輩にばっかり負担がいって」
「何言ってんの?
まだやっと会社に慣れてきたって時期でしょ?
そんな全然……」
言いながら、葵ちゃんはホントにいい子だな、と思う。
1年前の自分は“先輩にばっかり負担がいって”なんて思えていただろうか?
「よ。
残業だったの?2人とも」
葵ちゃんと下まで一緒に降りるため、エレベーターに向かい通路を歩いていると、肩にポンと手を置かれた。
「ああ、びっくりした。
笹原君も今帰り?」
笹原君というのは私の同期の営業課の男だ。
大学で1年ダブっているらしくて歳は1つ上。
同期は彼しかいないため、自然と話す機会が多くなった。
「そ。
偶然ついでに晩飯どっかで一緒しない?
俺、もう腹ペコ」
確かに既に夜8時前。
月末で忙しくて、加えて近日中に吉川さんがチェックの続きをしにくるのでその準備もあり、ズルズルと遅くなってしまっていた。
御飯はお母さんが作っているだろうけど、いいや、メールして明日の朝御飯に回してもらおう。
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