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「あるにはあるよ。
でも、そんなんじゃないし……」
そう。
そんなんじゃ全くない。
「何?
仕事で?」
「うん。
うちの会社の人じゃないんだけど、監査みたいなことしに来る人で、私経理だからほら、マンツーマンで……」
「あら、密室に2人だけだなんて恋が始まる可能性大じゃない?
その手の恋愛もの多いわよ」
まるで新しい恋愛ドラマが始まるかのごとく、目をキラキラさせて勝手に盛り上がり出す2人。
「だから……」
――そんなんじゃ、全く、ないんだ。
グラスの中の氷が、また勝手に、だけど静かに、カランと小さく音を立てた。
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